実は明るさの加減も目の疲れに深いかかわりがあるんです

誰しも一度はお父さんやお母さんから「暗い所で本を読むと目が悪くなるよ」といったことを言われた経験があるかと思います。これは本を読むことだけでなく色々な作業についても言えることですが、どうして暗い所で作業をしてはいけないのかご存知でしょうか?その理由には、目が物を見るときの仕組みが大きくかかわってくるのです。

まず目の部分的な名称についておさらいをしておきましょう。なお、眼球の内部構造についての説明はここでは省略します。人間の目は外側から強膜、虹彩、瞳孔という構造になっています。強膜は白目の部分と言った方がわかりやすいですね。そして虹彩の中にある真っ黒な部分が瞳孔で、これが一般的に黒目とも呼ばれています。瞳孔は明るさによって伸縮する特徴があり、これが目のピント合わせに役立ってくれるのです。それではこの瞳孔と明るさには一体どのような関係があるのでしょうか。

通常人が物を見るとき、瞳孔はピンホール効果を発揮します。ピンホール効果というのは、瞳孔を縮めることで光を通す穴を小さくし、その人にとって快適なピント調節を行ってくれるものです。このピンホール効果が正常に出現すると、処理しなければならない光の情報はわずかになり、作業が簡潔になりますから目の焦点がきっちり合うようになります。こうした目の働きにより、人は物をはっきり認識できるようになっているわけです。

また、視力が悪い人は物を見るとき、対象をよりはっきりとらえようとしてつい目を細めてしまいますよね。こうすると少しではありますが、物が見やすくなります。なぜなら目を細めたときもピンホール効果と同様の現象が起きるため、ピントが合わせやすくなっているからなんです。

一方、暗い所では瞳孔は大きく広がっていきます。そのためピンホール効果がうまく作用しないので、光を取り入れる穴も自然と広がってしまいます。そうなってくると光は穴をきちんと通過せずに分散しがちになります。目はそういったばらばらの光を追いかけ回り、そのすべてに焦点を定めようとするために適切な情報処理ができなくなります。光がまとまらないと目のピント合わせが不完全になり、物が見えづらくなるということなんです。

ですから暗い環境下で無理に本を読んだり目を使う作業を行うと「もっとよく見えるようにしなければ」と目が判断し、通常よりも筋肉を酷使していきます。結果として目に疲労がたまり、疲れ目という症状が現れるようになってしまうのです。このことが、暗い場所で作業をしてはいけないと一般的に言われる由縁なんです。

読書や勉強をするときは、机などにあるような手元を照らす電灯にも気を配るようにしてください。明るければいいだろうと思う人もいるでしょう。確かに周囲を明るくすることは目の負担を減らすには重要なことです。しかし、自分の影が見る物をさえぎってしまう状況になっているのであれば注意してください。この場合も目が影の中にある対象をとらえようと目の筋肉を余計に使い始めるので、疲れ目を引き起こしやすくなります。つまりは暗い中で作業をした場合と同様の現象が起こるということです。

ただ、どの程度の明るさが眩しいか暗いかという判断は一様ではなく個人差があるという点にも注意が必要です。感覚は他者と比べることがとても難しいものですから、仕事場ではなかなか自分に合った明るさの環境にいることはできないでしょう。ですがもし明るさを調節できる環境下にあるのなら、他の人の迷惑にならず、かつできるだけ自分が作業をするのに楽な環境をつくっていきましょう。積極的な対処が、目を強い刺激から保護していくためには大切なことです。